※Ashaのミリュウ様との相互記念に贈らせていただきます。
※(拝借した元設定+妄想)×自己脳内補間=混沌(×∞)
※ちょっと自由にやり過ぎた気がする。そして無駄に長い。
※あと、作品に一箇所はDV要素を入れずにはいられない私はたぶんもう病気だとおもう。
※こんなものでもよろしければ。(投げつけ
「あ、」
地球では春と呼ばれるこの季節が、ヤコはあまり好きではなかった。
嫌いではない。自分と、最愛の兄がこの世に生まれ落ちた季節でもあるのだから。
しかし。
ヤコがマホガニーの宝石箱から、殊更慎重に取り出した髪飾りはその小さな手のひらに収まると同時にピシリと音を立てて砕けてしまった。
いつものことだ。
その事実がまた深くヤコを責め立てる。
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遠い昔に、当時新任であった庭師が庭園の一角に植えてくれたスズランの園に設置されたベンチに腰掛け、ヤコは溜息を吐いた。
視線はその手の中の壊れてしまった半月形の髪飾りに注がれている。
「溜息を吐いては幸福が逃げてしまいますよ」
頭上で響いた耳に心地よい上質なシルクを思わせる声に驚いてヤコは顔を上げた。
「エイジア様…」
「どうなさったのですか?今日は貴女の誕生日では?溜息を吐くような日ではないでしょうに」
訳が解らないと言いたげなエイジアの視線を受け止め、ヤコは苦笑するとベンチの端に移動した。
空けられたスペースにエイジアが腰を落ち着けると、ヤコは再び手元に視線を落としポツリと口を開いた。
「ネウロは、毎年髪飾りをプレゼントしてくれるんです」
「それではもうたくさんお持ちなのでは?」
エイジアは首を傾げてヤコを見た。ヤコは仄かに口元を緩めて薄く笑みを刷くと、寧ろ彼女こそが今すぐ壊れてしまいそうな風情で僅かに目線を上げてエイジアを見つめ、ややしてふるふると首を横に振った。
恋する少女の持つ憂いに満ちた至上の微笑みに射抜かれたように圧倒されたエイジアは、それでも内心の動揺を一片たりとも洩らさずに先を促す。
「いえ…いつも、誕生日を迎えるまでに壊れてしまうから、私これしか持っていないんです。
ネウロが、兄様がくれるものはひとつだって無くしたくないのに。
だから、今年こそは大事にしようと思っていたのに、やっぱり砕けてしまった」
悔しそうに言葉を紡いだヤコが名残惜しそうに指先を曲げただけで、その小さな手のひらの中の髪飾りはパキ、と小さく悲鳴を上げて崩壊を始める。
恐らく魔界一非力な少女が触れただけで皹が入るとは、如何なる現象かとエイジアは微かに眉根を寄せた。
「奇妙しいですね。普通、よっぽど乱暴に扱ったりしなければ髪飾りが一年で壊れてしまうなんて」
ありえない。とは続けられなかった。ヤコの笑顔は翳り行くばかりだった。
「一度は補強しようと思ったんですけど、私には魔力があまり無いから…」
ヤコは心配を掛けまいと無理矢理に笑って見せた。しかし、それはエイジアの目にはどうしても泣き出してしまうのを堪えているようにしか見えなかった。
「私で良ければ直してみましょうか?元に戻るという確証はありませんが」
たかだか髪飾りひとつのためにここまで嘆く少女が居たたまれず、エイジアはヤコに手を差し出した。
ヤコは伸べられたエイジアの手に、徐々に砂礫になり行く贈り物の残骸を載せた。
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