泣きたいくらい、幸せな夢を見た。
泣きたいくらい、幸せな夢を見た。
暖かな日差しの中、パチリと目を開くと、こちらを覗き込んでいるのは小さな子ども。
柔らかそうなキャラメルブラウンの髪の毛に、琥珀色の大きな瞳。
顔立ちはそう、写真でしか知らないけれど、幼い頃の私によく似ている。
「ママ、かぜひくよ」
むぅ、と顰められた顔は私と同じ筈なのに、なんとなく誰かさんを思い出して少し笑う。
「疲れてたの。寝ちゃってごめんね」
のろのろと半分ほど睡魔に支配されながら起き上がると、その子どもは私の首に腕を回し膝に乗り上がってくる。
蝉時雨が五月蝿いある夏の日、公園の木立の間にシートを敷いてピクニック。
うっすらと汗ばんだ子どもの体温が心地良い。
吹き抜ける、草むらの湿気を孕んだ熱風すらも愛おしく思える。
「ねぇ、***暑くないの?」
「ママ、ちょっとつめたいからへーき」
「そう?日陰に入り過ぎたのかな?」
言って、子どもを抱えて陽向に出ようと立ち上がろうとすると、後ろから肩を押さえられて制止がかかる。
腕は私の首の両脇を通過し、子どもの脇を捕まえるとフワリと持ち上げた。
子どもを自分の頭上で半回転させ、その肩に降ろして私を見下ろす男の顔は、眩い木洩れ日の逆光でよく見えない。
手を翳して2人を見上げる私に男の長い腕が伸びてきて、僅かに長身を屈めるとその片腕が巻きつき、私を2人に引き寄せる。
先程よりも近付いた男の顔を見上げれば、翠色(みどりいろ)の瞳が木々の緑を映し込んで、より深い碧(みどり)に染まっている。
踏み込んだが最後、足を取られて沈むしかない泥沼のように、私を捕らえて離さない碧がゆっくりと細められた。
「何を呆けている。締まりの無い顔が更に崩れているぞ?」
可笑しそうにからかう声はなかなか辛辣な事を言っているけれど、背中に添えられた腕はどこまでも優しい。
「あんたがさ、丸くなったなぁと思ったら嬉しくて」
「…そうか」
ゆったりと男の胸に体を預けて目を閉じると、巻きついた腕が腰を支えてくれる。
胸に溢れて止まらない気持ちを唇に載せると、男と子どもが笑う気配。
穏やかなこの時が続くよう祈りながら、私は男の背に腕を回した。
「………コ、ヤコ」
「ぅん?」
「何を泣いているのだ、ナメクジ女」
「うん。今のセリフで泣きそうだわ」
「既に体液を垂れ流している身で何を言うか」
サラリと革手袋の親指で目元を拭うネウロに、夢の中の男がダブって後から後から涙が滲んでくる。
堪えきれなくてネウロの胸にしがみつくように摺り寄れば、自然に腕が絡まった。
「何なのだ、一体」
困ったように呟く声も、私の背中を撫でる手も、全て全て愛しくて。
「なんでもない」
馴染んだやや低めな体温に包まれて答える。
「ただ」
胸が押し潰されそうなほど、
「泣きたいくらい幸せな夢を見ただけ」
(内容は教えてあげないけど!)
白昼夢/Daydream
100310
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白昼夢って起きてる状態で見てる夢だけど。
ていうかトリップしてる状態のことだけど。
理想や希望を見るのが白昼夢と聞いたので。
こんな未来を夢見て、ハッピーバースデイ、ネウヤコ!!
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